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大阪地方裁判所 昭和27年(ワ)1811号 判決

X(原告)は昭和二五年六月ごろ訴外A・Bと共同で製菓事業をはじめ、同年一〇月五日、右共同事業を改組して訴外C株式会社を設立してX・A・Bの三名は取締役に就任し、同月一二日X・A・Bの三名に連帯してY(被告)から金三〇万円を、利息月三分二厘、弁済期昭和二六年四月三〇日、遅延損害金一〇〇円につき日歩二〇銭の約で借り受けてこれをC会社の営業資金にあて、右貸借については公正証書を作成した。Yはこの公正証書に基いてXに対して強制執行をしたので、Xは本件請求異議の訴を起した。異議の理由としてXは(一)昭和二六年四月ごろYとC会社間における、更改契約の成立によつてXの債務は消滅した、(二)元金債務の内金一五万円は弁済により消滅した、(三)遅延損害金の約定は、昭和二九年法律第一〇〇号による改正前の旧利息制限法第五条により、年一割を超える部分は不当である、と主張した。Yは右(一)と(三)の異議理由を争い、(三)に対して、本件貸借当時、Yは金融業を営み、その営業として本件貸付をしたものであり、X等三名はいずれも商人であつたから、右貸借は商事貸借である、従つて遅延損害金の約定は、改正前の商法施行法第一一七条により、旧利息制限法第五条の適用がない、と抗争した。

理由

X主張の更改契約の成立を認める証拠はない。証拠によれば、昭和二六年四月ごろXの要望により、YとC会社との間で、C会社においてX等のYに対する債務を重畳的に引き受ける旨約し、C会社とAが元金の内金一五万円と同年一〇月末までの利息をYに支払つたことが認められる。

証拠によれば本件貸付当時Yは金融業を営み、本件貸付はその営業として行われたものであるが、Yは自己資金をもつて金融業を営み、本件貸付も自己資金によるものであると認められる。かような自己資金による貸付行為は要旨(1)の理由で営業としてなされても、商行為にはならないと解するのが相当である。またX・A・Bは当時C会社の取締役であつたが、同人等が当時商人であつたとの証拠はない。従つて本件貸借は商事貸借ではないというべきであるから、これについては、旧利息制限法第五条の適用があるものといわなければならない。そうすると要旨(2)の理由で、右損害金の約定は年一割の割合に減少するのが相当である。よつて本訴請求は、元金一五万円とこれに対する年一割の割合による損害金を超える部分につき、本件公正証書の執行力の排除を求める限度において正当。

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